カツ丼A、B、Cで知られる高崎の老舗食堂「栄寿亭」(高崎市あら町、TEL 027-322-2740)が守り続ける「伝統の味」の秘密を探った。
栄寿亭は1919(大正8)年、同地で創業した。メーンのカツ丼は「A=卵なし」(400円)、「B=卵ひき」(450円)、「C=卵なし、ジャンボカツ」(660円)の3種類があり、いずれも創業当時と変わらぬ味を守る。
現在の店主、若林洋さんは4代目。同店はカツ丼だけで1日300~400食の利用があるため、朝5時30分から仕込みを始めないと間に合わない。閉店後も午前0時まで翌日の仕込みと、店を開けている時間より仕込みの時間の方が長いほどだ。
「朝から深夜までとにかく仕事に追われる毎日。数をこなすのが精一杯だが、味を受け継いだ者の責任として仕込みの手抜きはできない。大変だけどね」と苦笑い。
カツ丼のたれはしょうゆ、砂糖、みりんを使い甘めに仕上げる。「配合は秘密。肉は太田市の生産者から直接仕入れる『上州もち豚』のモモ。米はコシヒカリ100%」(若林さん)。
卵でとじないカツ丼AとCは一見ソースカツ丼のようだが、食べるとソースカツ丼ではないことがわかる。テークアウト用のメニューには「カツ丼Aはソースカツ丼ではありません。伝統的な和風だれのカツ丼です」との注意書きも。
客層は高校生から、数十年前から通い続ける年配者までと幅広い。「50年以上のお客さまもいるので『味が変わった』と言われないように、とにかく仕込みの手抜きはできない」。
メニューはカツ丼のほか、「玉子丼」(350円)、「カレーライス」(380円)、「チキンライス」(350円)、「オムライス」(400円)と洋食の定番メニューの快い響きと価格が並ぶ。最も高額なのは810円の「エビフライライス」と「ヒレカツライス」。
営業時間は11時~14時、17時~19時。金曜、第3木曜定休。