9月1日に工事の入札が凍結された「八ツ場ダム」――完成すれば水没する川原湯温泉を映像やパネルで紹介する「移りかわる風景」が現在、群馬県庁(前橋市大手1)で開催されている。
同展では川原湯温泉の伝統行事「湯かけ祭り」の映像、川原湯温泉の観光ポスターとともに、八ツ場ダム完成後のジオラマなどを展示している。
川原湯温泉旅館組合は9月7日、「過去も現在も、この地で生きて旅館業を続けてきた。未来永劫、この地で子々孫々末代に至るまで旅館業を続けていく覚悟。住民の中にはすでに新しい土地を購入した人、家屋を建築中の人、さらには移転が済み、ライフラインの整わない不自由な場所で新生活をスタートし、仲間の移転を待ち望んでいる人もいる。ダムで翻弄(ほんろう)されている水没住民の訴えを汲み、充分慎重に対応願いたい」(抜粋)などの声明文を出した。
川原湯温泉の源泉は水没地域にある。そのため1989年には新しい源泉が掘られた。泉質は同じで、現在営業中の7軒の旅館では両方の源泉を混ぜて提供している。
大澤正明群馬県知事は「(水没地域の住民は)半世紀以上前から長年にわたり闘争を繰り広げてきたが、住居移転を余儀なくされ、それでもどうにか生活再建のめどが立ちそうだという矢先であっただけに不安を募らせただろうと胸が痛む。ダム建設は国の政策。我々は政党とではなく国と約束して進めてきたのに」と憤りを隠さない。
ジオラマには、今回の入札で工事が始まる予定だった堤体(イメージ)があり、青い半透明のアクリル板の下に水没地域が見える。
川原湯温泉、吾妻渓谷、長野原町周辺は新しい道路建設が進み、しばらく足を踏み入れないでいると場所がわからなくなるほどのスピードで変化している。
「移りかわる風景」は9月27日まで。