前橋市は3月28日、米国の個人宅で見つかった短刀が、1876(明治9)年に群馬から米国に運ばれた吉田松陰(1830~1859年)の「短刀」と判定されたと発表した。
短刀はカリフォルニア州バークレーに住むティム新井さんが持っていた。ティムさんは2012年、群馬県立歴史博物館などが松陰の短刀を探していることを知り、所有する4本の刀の内3本の写真を送り協力したが該当しなかった。
残りの1本。2015年4月、映画「楫取素彦物語」の桜井顕監督がティムさん宅を訪れた際、短刀の茎(なかご)に刻まれた「国益」の文字に着目。「これが松蔭の短刀ではないか」ということになり、昨年8月、ティムさんが日本に運んだ。短刀は検疫などを経て12月に前橋。調査の結果、群馬から米国に運ばれた松蔭の短刀と判明した。「国益」は中世(15~6世紀)の名匠。
この短刀は松陰の妹で初代群馬県令、楫取素彦の妻、寿(ひさ)が松蔭の形見として譲り受けたもので「形見の短刀」と呼ばれる。
寿は1876(明治9)年、生糸の輸出販路開拓を目的に渡米する新井領一郎(上州=群馬)に短刀を渡す。驚く領一郎に寿は「この品には兄の魂が込められているのです。その魂は兄の夢であった太平洋を越えることによってのみ、安らかに眠ることができるのです」と語ったといわれる。
前橋市ではこの発見を記念し3月31日、前橋文学館(前橋市千代田3)でティムさん、楫取能彦さんを迎え講演会を開くとともに、短刀を一般公開する。
講演会の開催時間は13時~。事前予約が必要。予約は前橋文学館(TEL 027-235-8011)で受け付ける。短刀の一般公開は9時~17時。水曜休館(5月3日は開館)。5月7日まで。