「おきりこみ」専門店「貴美庵」(高崎市箕郷町、TEL 027-371-2650)は、群馬県産小麦の手打ち麺と自家栽培野菜を使った「おきりこみ」を提供している。
「おきりこみ」は大根、にんじん、ネギ、しいたけ、里芋などの野菜といっしょに、幅広の麺をゆでずに煮込むもので、麺についた小麦粉が汁に溶けとろみが付くのが特長。秋から冬にかけて群馬県内の家庭でよく作られる郷土料理だ。農林水産省が12月18日に発表した「農山漁村の郷土料理百選」(全国の農山漁村で受け継がれ国民的に支持されている郷土料理99品)に、群馬県からは「おきりこみ」と「生芋こんにゃく料理」が選ばれた。
「貴美庵」は1992年の開店以来「地のもの」にこだわり、「おきりこみ」と「すいとん」を提供している。開店当初は野菜だけでなく小麦まで自家栽培していたが、「あまりに大変なので、現在は箕郷町の農家に栽培を委託している」(店主の安田紀美さん)。同店の「おきりこみ」と「すいとん」には麺より野菜の方が多いと感じる程ふんだんに野菜が使われている。「おきりこみ」と「すいとん」の前に出される前菜も野菜がメーン。利用者の中には「『野菜を食べに来た』という若い女性もいる」(同)という。
「家族に食べさせるために作っていた『おきりこみ』と全く同じものを提供している。丁寧にだしを取り、たくさん野菜を入れ、開店直前に打った麺を入れて煮込む」(紀美さん)。麺は毎朝、夫の金蔵さんがこね、踏み、寝かせておいたものを開店時間の直前に紀美さんが打つ。
野菜作りは主に金蔵さんが担当している。金蔵さん野菜だけでなく同店の店舗も建ててしまった。「定年後に趣味の能面を彫る工房にしようと思って友人の助けを借りて建てたが、定年まで間があったため妻が店を始めた」(金蔵さん)という。しっくいの壁、いろりをしつらえた店内のどこを見ても、素人の手によるものには見えない。
同店の利用者は県内外さまざまだが以前、「とてもおいしい『おきりこみ』だったが、私には祖母の作る『おきりこみ』の方がおいしい」という男性客(群馬県在住)があり、「おばあちゃんの『おきりこみ』を食べさせてもらえないかと、厚かましくも頼んでみたところ快諾してくれたため、夫と娘と3人でごちそうになった。今でも毎日、その時の『おきりこみ』の味に近づくようにと思いながら作っている」(紀美さん)と話す。
「おきりこみ」は家庭料理のため、具の種類や分量、麺の太さや固さ、味付けなど「食べ慣れた味」がある。「農山漁村の郷土料理百選」の選考委員の一人、料理評論家・服部幸應さんは、「100選だが99の料理を選定した。残りのひとつは自分の好きな郷土料理を選んで」と話していた。群馬県では「我が家のおきりこみ」を加えて「百選」という人も多いか。
「貴美庵」の営業時間は11時30分~14時。おきりこみ(前菜付き)=1,000円、すいとん(前菜付き)=1,000円。おきりこみは1日限定20食。日曜・月曜定休。
くし焼き店で群馬産ブランド鶏「上州地鶏」を提供-高崎唯一(高崎経済新聞)明治創業の精肉店-久々の新商品「バラカツ」発売1周年(高崎経済新聞)