電車事故が原因で今年4月、左前足、左後ろ足を切断したすみれちゃんの新しい里親をNPO法人群馬わんにゃんネットワーク(高崎市和田多中町)が募集している。
すみれちゃんは昨年12月に高崎市内で保護(1度目)された5~6歳程度(当時)とみられるメスの柴犬。わんにゃんネットワークの支援により3月18日、前橋市在住の里親が決まった。事故は引き取られてから約3週間後に起きた。
4月9日、上毛電鉄の線路内で発見されたすみれちゃんは、前橋東警察署に運び込まれた。左側の足やしっぽに大けがをしていたが、動物は法律上「遺失物」。当日は土曜日で役所が休みだったことからマイクロチップも鑑札も付いていたが用をなさず、手当てもされずに警察署の外に置かれた。11日、すみれちゃんは里親によって渋川市内の動物病院に移される。
わんにゃんネットワークがすみれちゃんの事故を知ったのは11日。渋川市内の病院に連絡したが「里親の許可なしに会わせることもできない」と突き放された。里親に連絡し、残念ながら引き続き飼う意思がなないこと、飼い主としての権利放棄の確認が取れたことから、12日に保護(2度目)することができた。同院はすみれちゃんに栄養剤の点滴は行ったものの傷には手が付けられていなかった。
すみれちゃんは中野動物病院(高崎市八島町)に移された。長時間、消毒もせず放置されていたため傷を清潔にしないと手術もできない状態だった。手術ができたのは14日。左前足、左後ろ足、尻尾を切断した。
手術後、すみれちゃんは残った足で立とうとするがバランスが取れない。5月には神奈川県の動物用車いす製造メーカーで1台目の車いすを製作。現在はリハビリ治療を受けているアニマルクリニックこばやし(埼玉県深谷市)で新しい車いすの製作中だ。
アニマルクリニックこばやし院長の小林孝之さんは「すみれちゃんの場合、前足の推進力を使うリヤカー型の車いすでは生活向上の目的を果たせない。リハビリにより体を斜めにして残った足を上手に使えるようになってきており、状況に合った車いすでの生活を手にしつつある」と話す。
わんにゃんネットワーク理事長の飯田有紀子さんは「大けがをして手足を失い、人間だったらくよくよするだろうが、すみれちゃんは2本足でどんどん前に進んで行く。あきらめずに前に進めと教えられているようで、私たちが元気をもらっている」と。
わんにゃんネットワークではすみれちゃんの里親を募集している。具体的な条件は同NPOのホームページで確認できる。飯田さんは「ハンディキャップを良く理解した上で、今度こそ家族の一員として迎え、最後まで、どんなことがあっても面倒がみられる人」と力を込める。