戦後の復興期から現在まで、ほぼ同じメニューを提供する老舗食堂「えびす食堂」(前橋市千代田2、TEL 027-231-3234)が3月、屋根からはがれた石こうが当たって壊れた看板を修復し、元通りの姿に戻った。
えびす食堂は1955(昭和30)年に同地で創業した。レトロな外観、内装、そしてレトロなメニューは地元新聞や全国紙の地方版、ブログなどでもよく取り上げられてきた。
「新聞の取材は3回目ぐらいだと思う」と話す横溝さんは80歳。昨年夫に先立たれ、娘の手を借りて店を切り盛りする。娘と言っても60歳だ。
「昔はね、すぐ前の消防署(前橋市消防本部中央消防署、2000年に移転)があって、たくさんの人が勤めていたから朝でも昼でもよく利用してくれた。当時は出前も多かったし、サラリーマンや単身赴任の人の利用も多かった」と振り返る。
利用客が減ったとは言え、8時30分から14時という短い営業時間にかかわらず、今でも20人前後が利用する。昔から変わらず注文が多いのは「フライ定食」で、コロッケ、ハムカツ(半分)、ちくわフライ、キャベツの盛り合わせにご飯、みそ汁、自家製のぬか漬けが付いて500円。
単品の「ちくわフライ」(単品=30円)は、「中身はちくわ」と言われなければ、ちくわとは気付かない。揚げもの好きの横溝さんがフライにする安くておいしい食材はないかと、ちくわフライを考案した。
「揚げものは今も皆さんよく食べてくれるが、漬けものに全くはしを付けない人が増えた。漬けものと言えば『おふくろの味』の代表。おふくろの味はなくなってしまったのかな…」と横溝さん。
横溝さんのぬか漬けは塩味が控え目で、野菜の香りとともにほんのりとぬかの香りがする。最近はうなぎ店でも市販の漬けものを出すところが増える中、歴史ある食堂の中には同店のように自家製にこだわる店も多い。
前橋のB級グルメの原点の一つである同店の営業時間は8時30分~14時。日曜・祝日定休。