総務省は、地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業におけるアドバイザー(支援分野:公営企業関係・地方公共団体のDX関係)として、スカイビュージャパン株式会社(東京都豊島区)代表取締役の日高雄一郎を登録することを公表しました。
2022年12月に国家資格が創設されて3年目を迎えた「無人航空機操縦士」の有資格者が本事業のアドバイザーリストに登録されるのは初めてで、行政分野におけるアドバイザー業務を行う「デジタル人材」としてドローン技術の専門人材が認められた新たな一歩となります。
無人航空機操縦士として初のアドバイザー登録:ドローン社会実装の新時代へ
総務省「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」資料
総務省と地方公共団体金融機構の共同事業である「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」は、自治体のデジタル変革を専門的知見から支援する制度です。
日高は一等無人航空機操縦士(基本・目視外・夜間・25kg以上)の資格を保有し、ドローン技術を活用した行政サービスの高度化に取り組んできました。
全国の自治体において、地域特性に合わせたドローン運用ルールの策定支援、職員向け操縦訓練、首長向けの政策立案セミナーの実施など、実践的な支援活動を展開しています。
嬬恋村ではスマート農業・スマート防災の制度設計を担う
こうした活動の中で、群馬県嬬恋村において「ドローンを活用した『フェーズフリー型』スマート農業およびスマート防災DX」事業推進を統括しています。
この取り組みは令和7年度の内閣府「未来技術社会実装事業」に採択され、平時体制を構築する観点からの防災システム開発研究や災害時のデジタル支援体制の制度設計など、先進的なモデルケースとして注目されています。
これらの実績を評価いただいた地方公共団体からの推薦を経て、日高は総務省より「経営・財務マネジメント強化事業」におけるアドバイザー就任の打診を受けました。「ドローン技術の可能性を最大限に引き出し、行政DXの実効性を高めていきたい」との思いからこの打診を日高が受諾、このたび正式にアドバイザーリストへの登録が完了いたしました。
今後は、日高の実践経験や知見に基づくドローン技術と行政DXの統合ノウハウを自治体政策に活かしながら、実効性の高い社会実装を加速させることが期待されます。
フェーズフリー型アプローチがもたらすドローンの社会実装推進
平時の体制を整備して災害時に備える「フェーズフリー防災」
当社が推進する「フェーズフリー型」のドローン利活用は、平時の業務効率化のための仕組みを整えたうえで、非常時の災害受援に移行する際にその体制をシームレスにつなぐアプローチです。
日常で活用される様々なドローンとそこから取得する無数のデータを日常業務と災害対応の両方に活用することで、限られた予算と人材でも持続可能な防災体制を構築できます。
従来の防災対策は、平時と非常時で別々の予算・人員体制で運用されるため、非常時専用の設備や訓練が十分に活用されないという課題を抱えていました。 フェーズフリー型は日常業務の延長として災害対応ができるため、設備の稼働率向上、技術の習熟度維持、予算の効率的活用を同時に実現します。
嬬恋村の推進事例では、通常はキャベツ畑の生育状況監視や農薬散布前の測量時などに使用しているドローンを、豪雨災害時には被災状況把握に即座に転用。 平時からの運用体制を確立しながら、ドローンのみならずトラクターを始めとする他の農機具等を含めた自動運行も想定した仕組みづくりを推進。
一方でその運行を行う操縦士や農家を始めとする方々にはこの環境の利用を促進し、そのための情報を共有するためのツールを提供。ヒトとモノの両面から環境を整備しながら、災害訓練を兼ねた定期運用での情報収集も合わせて行う実装計画は、初動対応の大幅な迅速化に繋がることが期待されています。
このアプローチは地域の特性に合わせた多くの課題解決に貢献します:
災害対応の高度化:被災状況の迅速な把握、孤立集落の調査、物資配送
インフラ点検の効率化:橋梁、ダム、送電線などの効率的点検
農業の支援:広大な農地のモニタリングと生育状況の分析
過疎地域の生活支援:物流・医療品配送による生活基盤の維持
地方自治体からはじまる「ドローン協働利活用」の環境づくり
ドローンの社会実装推進には人材の整備が不可欠
当社はドローン技術は単なる「飛行するデバイス」にとどまらず、データ収集・分析・活用を含む総合的なデジタル変革の重要な要素と位置づけています。そのデバイスをあらゆるシーンに社会実装するためには、行政サイドにドローンの専門家を送り込み、共通認識のもとにその知見を活かした戦略立案がますます重要になります。
ドローンのテクノロジーは日々進化しているものの、一方でその利活用のための自治体レベルでの戦略をまとめる、さらにはその戦略をもとに社会実装につなげるための人材が不足しています。
当社は日高のアドバイザー就任を機に、ドローン技術者がデジタル人材として認知され、行政と深く関わりながら協働できる環境づくりと、自治体に航空DXを推進するための知見やノウハウを多くの無人航空機操縦士に共有していくための制度設計を進めてまいります。
技術民主化の推進:ドローン技術は比較的低コストで導入可能なため、大都市圏だけでなく地方の小規模自治体でも先進的なデジタル技術を活用できる可能性を追求し、地域間格差の解消と地方創生への貢献につながります。
先端技術との融合:AIやIoT、5Gなど他の先端技術とドローン技術を融合させることで、スマートシティやデジタルツインの構築など、さらに高度な行政DXへの発展が可能となり、より効率的で創造的な行政サービスの誕生につながります。
日本型モデルの横展開:災害大国日本ならではのドローン活用モデルを構築し、災害対応や環境モニタリングなどのグローバル課題解決に貢献できる知見として国際的に発信してまいります。
日本の地方自治体における社会実装事例は、同様の課題を抱える世界各地の地域にも応用できるポテンシャルがあります。
これらの取り組みを通じて、ドローン人材と行政の新たな協働モデルを確立し、持続可能で強靭な地域社会の実現に貢献してまいります。
日高雄一郎 総務省 DXアドバイザー
代表取締役 日高雄一郎のコメント「総務省の経営・財務マネジメント強化事業におけるDXアドバイザーリストに無人航空機操縦士の有資格者として初めて登録されると伺い、謹んでお受けするとともに大変光栄に存じます。
この登録は、2万人を超えると言われる無人航空機操縦士たちが国家資格化される以前から地道に積み上げてきた活動の成果が認められたものであるとともに、今後多くの無人航空機操縦士が続いていくためにその成果が早期に問われる、非常に重い責任を負うものであると認識しています。
地方自治体のDX推進において、ドローン技術は防災・インフラ点検・農業支援など多くの分野で革新的なソリューションを提供できます。特に人口減少や財政難に直面する地方自治体にとって、比較的低コストで導入できるドローン技術は、地域の持続可能性とレジリエンス向上に大きく貢献できると確信しています。
私は多くの無人航空機操縦士がデジタル人材として行政と深く関わりながら活躍できる未来を目指したいと考えています。先駆者としての責任を自覚し、物理空間とデジタル空間を融合した新たな行政DXの実現に向けて、自治体の皆様と共に創造的な取り組みを進めてまいります。」
※総務省の「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」アドバイザー:
総務省と地方公共団体金融機構の共同事業「地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業」の一環として、地方公共団体のDX関連事項など複数分野に対して専門的な助言を行うアドバイザー制度。
地方公共団体や公営企業、第三セクター等はアドバイザーリストに登録されたアドバイザー派遣を依頼することができ、アドバイザーの派遣に係る費用は地方公共団体金融機構が負担する。
※無人航空機操縦士の資格取得者数:
国土交通省の発表によると、国家資格化されて3年目を迎える「無人航空機操縦士」における2025年1月末時点の有資格者数は一等資格が2,597名、二等資格が20,628名、合計23,225名となっている。